トピックス

「上げDR」とは? 再エネ先進地・九州の2事例を紹介

九州電力は10月1日から11月30日までの2ヶ月間、オール電化の顧客を対象として昼間の電気料金が実質無料となる「タイムセール」を実施しています。「タイムセール」によって電気の需要が新たに創出されますが、こうした取り組みを「上げDR」といい、再生可能エネルギーを拡大するにあたって重要な取り組みです。そこで今回は、「上げDR」とは何かを解説し、九州での先進事例2つを紹介します。

「上げDR(デマンドレスポンス)」とは何か

「上げDR」とはいったい何なのかを解説する前に、DRについて簡単に説明しましょう。DRとは「デマンドレスポンス」の略で、電気の供給に合わせて電気の需要パターンを変化させることをいいます。

太陽光発電や風力発電など天候によって出力が左右される再生可能エネルギーをより多く導入するには、発電に合わせて電気の需要を適切にコントロールすることが重要です。そうしなければ、電気の需要を超えて発電された再エネ電気が無駄になるだけでなく、電気の需給バランスが崩れてしまう恐れがあります。このように、デマンドレスポンスは、出力の変動が大きい再エネ電気を有効活用する上で欠かせない取り組みです。

(需要制御のパターン。出典:資源エネルギー庁

さらに詳しくいうと、デマンドレスポンスは、電気の需要を増やす「上げDR」と電気の需要を減らす「下げDR」に分けられます。社会全体で電気を効率よく使っていくには、電気が余っているときには「上げDR」で需要を増やし、電気が足りなくなりそうなときには、節電などの「下げDR」に取り組むといった、需要側における柔軟な電気の使い方が重要なのです。

九州における「上げDR」の取り組み事例2つ

太陽光発電を中心に多くの再生可能エネルギーが導入されている九州では、早くから「上げDR」の取り組みが行われてきました。家庭用と産業用の需要家に向けて九州電力が行っている「上げDR」の取り組み事例を2つ紹介します。

①家庭用:スマホアプリを使った上げDR事例

九州電力は2022年から、独自のスマホアプリを通じて、春・秋の電気の需要が少ないときには「上げDR」、夏・冬の電気の需要が多いときには節電による「下げDR」を実施しています。参加者はまず、アプリを通じて「上げDR」や「下げDR」のチャレンジにエントリーします。「上げDR」や「下げDR」を行う前日になるとアプリに通知されるため、当日に対象時間帯の電気の使用パターンを変えてDRを実行し、その結果が成功と判断されれば成功報酬が得られるという仕組みです。これによって、期間合計で22万kWhのDR効果があったとのこと。これは一般家庭約40軒の1年間の電力使用量に相当します。

今年10月1日から11月30日までの2ヶ月間は、成功報酬として従来の3倍のポイントを付与することで、電気料金が実質無料となるキャンペーン「タイムセール」を実施しています。昼間の電気料金が割高なオール電化住宅を「タイムセール」の対象としており、効果的な「上げDR」の実施を目指しているところです。

②産業用:工場の生産シフトや自家発抑制による上げDR事例

九州電力は産業用の需要家に働きかけて、電気の需要が少ない春・秋の昼間に生産をシフトする「上げDR」に2018年から取り組んできました。春・秋のシーズン前に、あらかじめ「上げDR」の候補日を需要家と協議して決め、候補日の前々日に実施を依頼するという流れです。

また、需要家が運用している自家発電機を止めることで電気の需要を生み出す取り組みも行っています。「上げDR」の対象時間帯の電気料金単価を安く設定することで、電気を購入してもらい、需要を創出します。発電機の停止や再稼働に必要な時間も含めて対象時間を決めることで、需要家が取り組みやすいシステムになっています。

(参考:「上げDR」の取組について 九州電力株式会社 2023年10月16日

今後の「上げDR」の取り組み拡大に期待

電気の需要が少ないときに新しく需要を作り出す「上げDR」は、再生可能エネルギーの出力抑制量を低減するのにも役立つと期待されます。これまでは、電気を使う量に合わせて発電するという考え方が主流でしたが、再生可能エネルギーの拡大に伴って、電気の供給に合わせて需要を適切にコントロールする「デマンドレスポンス」が広く普及していくと考えられます。今後の「上げDR」の拡大に期待が寄せられます。

  • お問い合わせ・ご依頼

    CONTACT

    ご相談・管理のご依頼・ご質問等ございましたら、
    お気軽にお問い合わせください。

  • 080-5084-2891

    電話受付:平日9:00〜17:00

    お問い合わせ・ご依頼