経済産業省・資源エネルギー庁は、新電力の経過措置である部分供給に代わって、「分割供給」を導入する検討を始めました。今年10月にも導入を急ぐ考えを示していますが、現在、部分供給を契約している需要家に関しては、慎重な移行措置が求められます。
“経過措置”としての部分供給を廃止へ
1つの需要地に対して、新電力と大手電力会社との2者で電気を供給する部分供給。新電力がより多くの需要家に電気を送ることができるように、競争力を補完するための経過措置として設けられたものです。
しかし、資源エネルギー庁は近年、部分供給が本来の趣旨とは異なる運用がされていることを受け、部分供給の1つである通告型部分供給について、新規申し込みの受付を停止しました。また、新電力が電源を調達しやすい環境が整ったとして、今後はすべての部分供給を廃止する考えです。
分割供給ではさまざまな組み合わせが可能に
6月17日に開催された有識者会議では、部分供給に代わる「分割供給」の検討がスタートしました。分割供給では、新電力同士や、新電力と他エリアの大手電力会社などとの電力供給が可能になるとされています。
現在、部分供給の申し込みがあった場合、大手電力会社にはこれを引き受ける義務があります。新たな分割供給ではこの義務が撤廃され、さまざまな組み合わせの電力供給ができるようになる見通しです。
その一方で、大手電力会社の供給義務がなくなると、既存の部分供給の契約において、大手電力会社が契約を取りやめる可能性があります。そのため、委員からは、「需要家が長期の部分供給の契約をしている場合、分割供給の導入後に、大手電力会社が現行の契約を取りやめると、需要家に不利益が発生するおそれがある」といった懸念の声があがりました。
需要家への丁寧な説明と移行措置が必須
資源エネルギー庁は、早ければ今年10月にも部分供給を廃止して分割供給に切り替え、「現在、部分供給を契約している需要家には2025年4月1日までに分割供給へ移行してもらいたい」としています。
これに対して委員からは、「半年余りで契約の変更を求めるのは拙速。一律に移行するのではなく、十分な措置や柔軟な対応が必要だ」という指摘がありました。これを受けて、資源エネルギー庁は詳細についてさらに検討するとしています。
これまで、部分供給は需要家の電力コストを削減する手段などとして活用されてきました。制度の変更によって需要家の選択肢を狭めたり、需要家の混乱を招いたりしないように、十分な議論が求められます。
(参考:資源エネルギー庁『分割供給の導入について』)
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