燃料費調整額とは？ その推移と高騰の背景、上限撤廃についてわかりやすく解説

電気料金の高騰が止まりません。その大きな原因の1つが「燃料費調整額」の値上がりです。今回は、燃料費調整額とは何か、これまでの推移を示しながら、この高騰がどこまで続くのかについて考えます。

燃料費調整額とは何か？

まず「燃料費調整額」とは、電気料金を構成する要素の1つです。燃料費調整額単価は毎月変動し、使用電力量（kWh）に応じて請求されます。電気料金の構成要素には、ほかにも基本料金や従量料金、再エネ賦課金があります。詳しくはこちらの記事でご紹介しておりますので、ぜひ合わせてご覧ください。

電気料金における燃料費調整額とは、燃料価格や為替レートの変動を反映させる目的で設定されています。というのも、化石燃料を輸入している日本では、燃料価格や為替レートなどの変動は、電力会社の事業努力とは関係なく発生します。そのため、燃料費調整額という枠組みを設けて、価格変動を反映させるとともに、電力会社自身の企業努力も見えやすくしているのです。

ほかにも、燃料価格などの変動を反映する仕組みには、航空など運輸部門における「燃油サーチャージ」や、ガス料金の「原料費調整額」があります。

燃料費調整額の算出の仕組みとこれまでの推移

（出典：資源エネルギー庁）

燃料費調整額は、3〜5ヶ月前の3ヶ月間の貿易統計価格などから、当月の「平均燃料価格」を算出します。この平均燃料価格が、事前に設定された基準燃料価格より高ければ燃料費調整単価はプラス調整、低ければマイナス調整となります。つまり、5月の燃料費調整単価には、昨年12月から今年2月までの3ヶ月間の燃料価格が反映されるのです。

足元の燃料費調整単価（九州電力・高圧）の推移を見てみると、下図の通りになっています。

（出典：九州電力株式会社WEBサイトより筆者作成）

このグラフでは、2021年4月から2022年6月までの燃料費調整単価を示しています。例えば、最新の2022年6月の1.74円/kWhと、前年同月の-1.14円/kWhを比べてみると、1年間で2.88円/kWhも上昇していることがわかります。

この燃料費調整単価の値上がりが、電気料金の高騰を招いている大きな要因であると言えます。しかし、残念なことに、今のところ燃料価格が落ち着く兆しは見えず、それにともなって燃料費調整単価も当面は上がり続けると予想されているのです。

九電が10月から燃調の上限を撤廃。事実上の青天井に

これまで九州電力エリアでは、低圧のオール電化メニューを契約中の顧客に対し、燃料費調整額の上限が設定されていました。基準燃料価格の1.5倍が上限とされ、燃料価格がこれを上回った分は電力会社が負担することになっていたのです。

しかし、5月18日、九州電力はこの上限を2022年10月から撤廃することを発表しました。燃料費調整単価の上限撤廃の対象となるのは、2016年3月以前に「季時別電灯、時間帯別電灯、深夜電力A・B、第2深夜電力、ピークシフト電灯、高負荷率型電灯、低圧季時別電力」を契約している低圧需要家110万件です。

（参考：九州電力株式会社「季時別電灯」など旧オール電化プラン等におけるご契約の取扱い見直し）

このほかの低圧部門や高圧・特別高圧部門では、すでに燃料費調整単価の上限が撤廃されています。そのため、今回の発表によって、九州電力のすべての顧客の燃料費調整単価の上限がなくなったと考えられます。

電力会社からみると、燃料費調整額の上限を撤廃すれば、契約する需要家に対して燃料費の上昇分をすべて請求できるようになります。これによって燃料価格の高騰による経営リスクを分散する考えがあると推測されますが、そのしわ寄せが需要家の重い負担となることは否めません。

今こそ、もう一度省エネに取り組もう

とはいえ、現状では、新電力など別の小売電気事業者に切り替えたとしても、電気料金の削減が期待できる状況ではありません。多くの小売電気事業者が新規受付を停止したり、供給そのものを停止したりしているからです。

したがって、今、需要家が取り組むべきことは省エネによって使用電力量を少しでも削減することではないでしょうか。設備の使い方を見直し、どこかにムダが潜んでいないかを見つけ出し、エネルギーの使用量を減らすことがコスト削減の唯一のカギだと考えます。

省エネは、しばしば「乾いた雑巾を絞る」と表現されることもありますが、今一度、その余地がないか探らなければならないときが訪れているのかもしれません。