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拡大する出力制御、低減に向け火力発電の運用ルール見直し

太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの出力制御の実施が拡大しています。6月4日に関西電力が再エネの出力制御を行ったことで、未実施のエリアは東京電力のみになりました。経済産業省は、再エネの出力制御の低減に向けて火力発電所の運用ルールを見直す考えを示しています。

再エネの出力制御とは?

再エネの出力制御とは、電気の供給量が需要量を上回ったときに行われる措置です。電気は、ガスや水などと違って貯めておくことが難しく、常に需要と供給を一致させなければなりません。需要と供給のバランスが崩れてしまうと、最悪のケースでは大停電を引き起こしてしまうからです。そうならないために、常に電気の需要量と供給量を一致させることでバランスをとっているのです。

しかし、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、天候によって発電の出力が変動します。そのため、晴れた日の昼間など、太陽光発電や風力発電がたっぷりと発電する一方で電気の需要が少ない場合には、電気の供給が需要を上回ってしまいます。そのため、電気の供給量を抑える出力制御を実施して電気の需給バランスを維持します。

出力制御の「優先給電ルール」

出力制御を行うにあたっては、あらかじめ国が決めた「優先給電ルール」を守らなければなりません。優先給電ルールとは、電気の供給量を抑える順番を発電種別ごとに示したものはじめに火力発電の出力を抑え、次に他の電力エリアへ電気を送り、続いてバイオマス発電の出力を下げます。それでも電気の供給量が多い場合に、太陽光発電と風力発電の出力を抑制するルールになっているのです。九州電力送配電などすべての電力会社(一般送配電事業者)は、このルールに基づいて出力制御を行っています。

(優先給電ルールに基づく対応。出典:資源エネルギー庁

足元の状況を見ると、2018年10月に九州電力が全国で初めて出力制御を行って以来、出力制御を行う電力エリアは拡大の一途を辿っています。2022年4月には四国・東北・中国、5月には北海道、2023年1月に沖縄、4月に中部・北陸といった具合です。そして、6月4日に関西電力が実施したことで、全国の10電力エリアのうち東京電力管内を除く9エリアで再エネの出力制御が実施されました。東京電力エリアは電力の需要が大きく、余った電気を中部や東北に送ることができるため、今のところは実施されていません。(2023年6月15日現在)

火力発電の最低出力を30%に引き下げへ

再エネの出力制御は、電気の需給バランスを保つために必要なことですが、本来、発電できる電気を無駄にしていることでもあります。こうした背景から、経済産業省は優先給電ルールを見直して再エネの出力制御を減らそうと動き出しました。

具体的には、火力発電の最低出力を引き下げることで、太陽光発電と風力発電の出力制御を減らそうという考えです。現在50%とされている火力発電の最低出力を30%に見直すとされています。対象は新設の火力発電所で、既存の火力発電所は、更新の際に新ルールの30%を適用するということです。

こうした出力制御対策のためのルールの見直しは、今年度中に方針がとりまとめられる予定です。優先給電ルールを変更するにはガイドラインなどを変える必要があることから、新たなルールが施行されるのは早くて2024年になるとみられます。

(参考:経済産業省 系統ワーキンググループ

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