環境省は5月31日、PCB廃棄物処理基本計画の変更を発表しました。これは、高濃度PCB廃棄物の処理についての変更で、環境省が示した変更内容は以下の通りです。
計画的処理完了期限に加えて2年程度の処理期間が必要と見込まれる高濃度PCB廃棄物について、事業終了準備期間も活用し処理を行うこととしました。
事業終了後に発覚した北九州事業対象地域の変圧器・コンデンサー等について、大阪事業所及び豊田事業所での広域処理を実施することとしました。
出典)環境省_ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画の変更等について 2022年5月31日
さて、今回の発表は、需要家が高濃度PCB廃棄物を処分する期限に関するものなのでしょうか? それとも、需要家にとっての処分期限には変更がないのでしょうか? この疑問に答えるには、高濃度PCB廃棄物の処分期限について正しく知っておく必要があると言えます。
高濃度PCB廃棄物の処分期限の仕組みは?
まず、高濃度PCB廃棄物の処分期限について解説します。高濃度PCB廃棄物は、対象機器やエリアによって処分期限が定められています。それぞれの処分期限は下図の通りで、現在、ほとんどのエリアで処分期間が終了していることがわかります。(2022年6月22日現在)
実は、今回、環境省が発表した1点目の「計画的処理完了期限」とは上図の処分期限のことを指しているわけではありません。というのも、高濃度PCB廃棄物の保管事業者に対しては、下図のように「計画的処理完了期限」の原則1年前に処分・処分委託を行うよう義務付けられているのです。
続いて「事業終了準備期間」とは何かを解説します。「事業終了準備期間」とは、環境省によると「今後新たに生じる廃棄物の処理や処理が容易ではない機器の存在、事業終了のための準備を行うための期間を勘案したもの」と定義されています。
「事業終了準備期間」は処理の対象機器によって異なり、大型変圧器やコンデンサなどの場合は計画的処理完了期限から3年間、安定器や汚染物などの場合は2年間とされています。
つまり、予期せぬ高濃度PCB廃棄物が見つかったり、処理が難航したりしたときのために、予備の処理期間として設けられているものだと考えてよいでしょう。
高濃度PCB廃棄物、まだ1万台が未処理か
これらのことを踏まえると、今回の環境省の発表は、高濃度PCB廃棄物を保管している事業者にとっての変更ではないことがわかります。あくまで、高濃度PCB廃棄物の処分を行っている中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)において、必要に応じて処分を継続するという内容であることがご理解いただけたでしょうか。
同時に、予備の処理期間とされる「事業終了準備期間」でも処分を続けなければならないほど、高濃度PCB廃棄物の処理が追いついていない状況だと考えられます。
環境省は、2021年9月末時点の処理の進捗率(速報値)を公表しています。下図によると、未処理の機器が1.0万台あることに加え、ほぼ同量の未登録の機器も残されていると報告されており、早期の処理が望まれます。
PCBの期限内処理は国際条約で決められている
期限内の処理が急がれるPCBですが、背景には、国際条約による取り決めがあります。実は、過去に、一部のPCB使用地域から世界的に汚染が広がり、すでに北極などでもPCBが検出されるという深刻な事態になっているのです。
そこで、2001年に採択された「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)において、2025年までに機器内における使用を廃絶すること、2028年までに適正な管理を行うことが定められました。
日本は2002年にこのストックホルム条約を締結しており、こうした事情からPCBの処理を急いでいるという背景もあります。
参考)環境省:【第一部】 高濃度PCB廃棄物の 適正な処理の推進について
今回は、高濃度PCB廃棄物の制度変更について詳しく解説しましたが、低濃度PCB廃棄物に関しても、期限内の処理が求められます。低濃度PCB廃棄物の処理期限については、こちらの記事で詳しくご紹介しております。ぜひ合わせてご覧ください。(リンク:低濃度PCB廃棄物の処理はいつまでに行えばいい? 含有調査時の注意点は?)
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