
需給調整市場は、電気の需給バランスを維持するための「調整力」を取引する市場です。海外にも、同様の機能を持つ市場などが存在します。日本の需給調整市場と比べて、どのような点に違いがあるのか見ていきましょう。
日本の調整力は市場を通じて調達
そもそも、需給調整市場では、蓄電池などのエネルギーリソースによって生み出した調整力を取引します。こうした調整力によって電力需給のギャップを埋め、周波数を維持して電力の安定供給を実現しています。需給調整市場については、こちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。(参考:系統用蓄電池ビジネスの鍵を握る、需給調整市場とは? | 株式会社白水電気管理事務所)
日本の需給調整市場は、一般社団法人 電力需給調整力取引所という団体が市場管理を行っています。これは、九州電力送配電などの一般送配電事業者9社が共同設立した団体です。需給調整市場には5つの商品があり、それぞれの主な商品要件は下表の通りです。

(需給調整市場で取り扱う商品一覧。出典:一般社団法人 電力需給調整力取引所)
国によって市場の設計や仕組みが異なる
海外にも、日本の需給調整市場のように電力需給のギャップを埋めるための機能が存在します。国によって、市場の設計、運用方法、参加者の範囲、調整力の種類などに違いがあります。主要な国の需給調整市場をピックアップして紹介します。
イギリス
イギリスでは、「バランシングメカニズム」という仕組みで調整力を確保しています。これは、発電事業者や小売電気事業者が各種計画を提出後に発生した誤差を埋めるための役割を果たしています。バランシングメカニズムの他に、需給のギャップ(インバランス)を調整する役割を果たす機能として、「運転予備力(STOR、Short Term Operating Reserve)」、「瞬時調整力(Fast Reserve)」があります。また、「高速周波数応答(FFR、Firm Frequency Response)」は、周波数を調整する機能です。
アメリカ
アメリカでは、州や地域によって地域送電機関が異なります。中でも、PJMは北米最大の地域送電機関であり、ワシントン州などを管轄しています。PJMでは、「Reserve」、「Regulation」、「Frequency Response」という機能で調整力を調達しています。このうち、「Reserve」と「Regulation」は需給ギャップを調整する機能であり、市場で調達されます。その一方で、「Frequency Response」は日本の一次調整力に相当する周波数調整機能であり、市場ではなく強制供出されます。
このように、海外でも調整力をさまざまな方法で調達しており、市場調達や強制供出など仕組みが異なることがわかります。また、日本と同じように各国でも電力システム改革が進められており、この先、調整力がどのように拡充されていくのかにも注目です。
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