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系統用蓄電池ビジネスの鍵を握る、需給調整市場とは?

全国的に導入が進む系統用蓄電池。電力系統に直接充放電機能を提供することで、再エネの有効活用や電力の安定供給といった効果が期待されています。系統用蓄電池のビジネスモデルで重要な要素の1つが、需給調整市場における運用です。今回は、需給調整市場とは何か、わかりやすく解説します。

系統用蓄電池の役割

系統用蓄電池とは、電力系統に直接接続する蓄電池で、系統に直接充放電を行います。これによって、電気の需要と供給のバランスをとる効果が期待されています。例えば、太陽光発電や風力発電といった変動性の再生可能エネルギーは、天候によって出力が左右されます。一方で電気の需要も常に変動しており、そうした状況で安定供給を実現するには、電気の需要と供給をリアルタイムで一致させる必要があります。

系統用蓄電池は、電気の需要が供給を上回る際には、放電して系統に電気を送り出し、逆に、電気の供給が需要を上回るときには、充電して系統から電気を取り出すことができます。こうして電気の需給バランスを維持することによって、社会全体で再生可能エネルギーをもっと有効活用し、電気の安定供給をサポートできると期待されています。

系統用蓄電池のビジネスモデルと需給調整市場

現在、系統用蓄電池の主なビジネスモデルは、需給調整市場、容量市場、電力卸市場という3つの市場で運用収益を上げることです。需給調整市場とは電気の需給バランスを維持するための「調整力」を取引する市場です。また、容量市場では、将来発電できる能力「供給力」を、電力卸市場では電気そのものの価値「kWh価値」をそれぞれ取り引きします。

中でも、系統用蓄電池ビジネスの収益性を高めるには、需給調整市場における運用が重要だと考えられています。需給調整市場で取り引きされる「調整力」とは、電気の需要と供給のギャップを埋めるために活用されるものです。前述の通り、系統用蓄電池は充放電機能によって調整力を提供し、これに対する対価は需給調整市場を通じて取引されます。

需給調整市場の5つの商品区分

需給調整市場の商品要件。(出典:一般社団法人電力需給調整力取引所)

需給調整市場には、一次調整力、二次調整力①、二次調整力②、三次調整力①、三次調整力②という5つの商品があります。また、複数の商品に入札する複合入札も認められています。それぞれの商品には、出力の増減を指令してから応答するまでの時間や、指令の方法、応答の持続時間などによって細かな条件が設定されています。三次調整力はこれらの条件が比較的緩やかですが、一次調整力には厳しい条件が課されます。このため、一次調整力の方が取引価格は高値になる傾向にあります。

三次調整力②の取引結果の推移

5つの商品区分のうち、三次調整力②は他の商品と性格が異なり、固定価格買取(FIT)制度を適用されている発電所の発電計画の誤差を埋めるための調整力として活用されています。三次調整力②は、45分前の指令で3時間の持続時間など、比較的要件が軽い商品区分として、系統用蓄電池などが多く参加しています。三次調整力②のこれまでの取引結果は下記の通りです。

三次調整力②の取引結果の推移。(出典:電力需給調整力取引所)

電気の安定供給において重要な役割を占める需給調整市場には、系統用蓄電池をはじめとするさまざまなエネルギーリソースの参加が期待されています。市場の動向や制度の改正などについて、今後もリポートしていきます。

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