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データセンターの新設が電力需給に与える影響は?

経済産業省は今、国のエネルギー政策の根幹となるエネルギー基本計画の見直しを行っています。近年は、省エネなどの効果で、電力需要は減少する傾向にありました。しかし、AIの活用やデジタル化の進展を受けて、今後、データセンターの新設による電力需要の増加が見込まれています。こうした動きが電力需給にどのような影響を与えるのかについて考えます。

データセンターの新設計画で電力需要が増える

(参考:2024年以降のデータセンターの新設計画。出典:資源エネルギー庁

データセンターとは、大量のデータを24時間・365日にわたって処理する施設です。AIの活用やデジタル化を支えるインフラとして、データ処理機能は欠かせないものです。デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れが加速していることから、データセンターのニーズが高まっています。

こうした動きは日本国内だけに限らず、世界でも起こっています。国際エネルギー機関(IEA)によると、今後、欧米や中国などを中心に、電力需要に占めるデータセンターの割合が増加すると予想されています。国内でも、大都市圏の関東や関西を筆頭に、全国各地でデータセンターの新設が、上図の通り、計画中です。

それに加えて、九州では、半導体工場の新設工事が進んでいます。半導体の製造には大量の電気を24時間にわたって使用します。そのため、九州では電力需要が底上げされるのではないかと考えられます。九州では今、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの出力抑制が頻繁に行われていますが、電力需要が増大すれば、出力制御量が減るのではないかと期待されます。

高まるエネルギーの安全保障リスク

一方で、電気の供給に関しては、地政学的リスクの高い状況が続いています。日本は、一次エネルギーの8割以上を海外からの化石燃料に依存しています。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東情勢の緊迫化などの地政学リスクを踏まえ、化石燃料の調達先や、国内の備蓄量に関するリスクを分散することが極めて重要です。

世界の状況を見ると、エネルギーに関する地政学リスクは、今後も高い状態が続くと考えられます。日本のエネルギー自給率は2023年度で約13.3%。他のOECD諸国と比べて極めてエネルギー自給率が低い日本では、特に、エネルギー安全保障対策の重要性が高まっているのです。

こうした世界の状況を受けて、欧米では、グリーントランスフォーメーション(GX)を産業振興につなげる投資促進政策が加速しています。地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)排出量の削減と、経済発展とを結びつけようとする取り組みです。例えば、英国では、ヒートポンプなどの省エネ型設備の導入を推進するとともに、設置工事ができる人材を育成し、雇用を生み出そうとしています。欧州では、大規模な洋上風力発電プロジェクトを進めることで、オペレーションやメンテナンスに携わる人材の育成を図っています。

CO2削減と経済成長の両立が大きな課題に

もちろん、日本でもGXを推進する動きが始まっています。とはいえ、足元では、CO2排出量を削減するためにはコストがかかるケースも多く見られます。例えば、省エネ型の機器や設備の導入や更新、再生可能エネルギー設備の導入などです。国や自治体のさまざまな補助制度を活用することもできますが、人員の少ない中小企業などでは対応しきれないケースもあるでしょう。CO2削減と経済成長をどのようにして両立させるかは、あらゆる企業にとって大きな課題です。日本版GXをどのように経済成長につなげるかに、期待や関心が高まっています。

(参考:経済産業省・資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会

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