経済産業省が8月31日、令和5年度予算の概算要求を発表しました。今回は、この中から、産業分野のスマート保安に関する施策にスポットを当てて解説します。
経産省の概算要求、前年度比14%の増額
はじめに、概算要求とは何かについて簡単にご説明しましょう。概算要求とは、各省庁が、翌年度の予算額などを財務省に要求するものです。提出期限は毎年8月末となっています。提出された概算要求の予算案は、翌年1月の通常国会で審議可決され、正式に当初予算として成立するという流れになっています。
次に、経産省の令和5年度予算の概算要求の全体像についてです。要求額の合計は1兆3,914億円で、前年度と比べ13.7%の増額となりました。そのうち、エネルギー対策特別会計は8,273億円で、こちらも対前年度比15.2%の増加となっています。
ちなみに、エネルギー対策特別会計とは、主に「エネルギー需給構造高度化対策」「燃料安定供給対策」「電源立地対策」「電源利用対策」という4つの使途・目的のための予算です。石油石炭税や電源開発促進税が財源とされています。略称の「エネ特」と呼ばれることもあります。
スマート保安の導入支援に9億円を新規要求
令和5年度概算要求で、経産省は重点施策の1つに「持続的な成長を可能とする経済社会の実現」を挙げました。このうち「災害等のリスクに対して強靭な社会の実現」に189億円を要求しています。これは、前年度の110億円から70%近い大幅な増額です。
さらに、この中で新規に要求されたのが「スマート保安導入支援事業」の9億円です。これは、高圧ガス・電力・都市ガス・LPガスといった産業保安分野における、IoT・AI・ドローンなどを活用したスマート保安技術の導入促進のための事業だとされています。
「スマート保安導入支援事業」の概要は、上図の通り。民間企業などに対して、スマート保安技術の導入計画の策定に2分の1から3分の2の補助が行われるとみられます。また、事業期間は2023〜2027年度の5年間とされ、約80社の中小・中堅事業者によるスマート保安の先進事例をつくるとされている点にも注目です。
なお、これまでのスマート保安に関する予算としては「産業保安高度化推進事業」の5億円が、令和3年度補正予算に組み込まれていました。また、今年6月には、スマート保安を実践する事業者を認定する「高圧ガス保安法等の一部を改正する法律案」、いわゆる産業保安関係束ね法が国会で可決・成立しました。
冒頭でご説明した通り、概算要求は今後、国会での審議にかけられます。そのため、概算要求の額がそのまま成立するとは限りません。しかし、スマート保安に対して9億円という予算額が要求されたことには大きなインパクトがあります。この予算案が成立すれば、スマート保安にとって追い風となることは間違いないでしょう。本ブログでは、こうしたR5年度当初予算の動向についても、引き続きお届けしていきます。
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