電力契約のセーフティネットである最終保障料金が、2022年9月から値上げされる見通しが固まりました。市場価格を毎月反映することで、市況価格よりも最終保障料金の方が割安であるという状況を改善する考えです。今回は、最終保障料金の値上げの詳細や、旧一般電気事業者の標準メニューの見直し動向などについて、詳しく解説します。
最終保障料金は市場価格に連動へ
8月10日、九州電力送配電など一般送配電事業者9社は、最終保障料金の値上げに関する約款変更を経済産業大臣へ届け出たと発表しました。この届出が認可されれば、2022年9月1日から、最終保障料金が市場連動制となる予定です。
最終保障供給とは、どの電力会社とも契約のない無契約の状態でも電気の供給を保障する制度です。需要家を保護する観点から設けられた仕組みで、いわば電力契約のセーフティネットと位置付けられています。これまで、最終保障供給の料金は、標準料金メニューの1.2倍とされてきました。
しかし、昨年から続く燃料価格の高騰などの影響によって、市況の電力料金が値上がりし、最終保障料金の方が安い逆転現象が発生していました。そのため、本来セーフティネットであるはずの最終保障供給への申し込みが急増。適正な価格競争が行われないことや、一般送配電各社への負担が増えていることなどが懸念されていたのです。下図の通り、最終保障供給の契約件数は2022年3月ごろから急激に増え、7月には27,000件を超えました。
(出典:経済産業省)
こうした背景から、最終保障料金の見直しが検討され、電力市場価格をできるだけタイムリーに反映することが決定されたのです。具体的には、前月の日本卸電力取引所(JEPX)のエリアプライスの単純平均を当月の最終保障料金に反映することになりました。つまり、最終保障料金の単価は毎月変動することになったのです。
事前に行われた最終保障料金のシミュレーションは、以下の通り。九州エリアはもっとも補正項の大きく、6月のシミュレーションでは5円/kWhを超える値上げが試算されました。
(出典:電力・ガス取引監視等委員会)
小売標準料金メニューも来春には値上げか
一方で、小売部門である旧一般電気事業者各社においても、標準料金メニューを値上げし、受け付けを再開する検討を進めているところです。九州電力は8月3日、特別高圧・高圧の需要家について標準料金メニューの見直しを進め、2023年4月にも供給を再開する見通しであると発表しました。ほかの旧一般電気事業者各社も、同様に値上げの検討を行っていることが報じられています。
標準料金メニューの値上げがどれくらいになるのかについては、まだ詳細が明らかになっていません。いずれにしても、電気料金を取り巻く環境においては、値上げの動きがとどまるところを知りません。本ブログでも以前お伝えした通り、燃料費調整額も右肩上がりの状況であり、残念ながら、需要家にとっては厳しい状況が続くと予想されます。
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