高齢化や人材不足といった問題を抱える電気保安。増加する再生可能エネルギー発電設備をどうやって保安していくかも、重要なテーマです。そんな中、経済産業省が電気主任技術者の配置要件を見直す方向性を打ち出しました。
スマート保安による「統括制度」の見直し案
11月5日の経産省・電気保安制度ワーキンググループでは、特別高圧の再生可能エネルギー発電設備について、スマート保安技術を活用した「統括制度」の見直しが提案されました。
特別高圧の再エネ発電所の保安の課題
電圧5万ボルト以上の特別高圧のメガソーラー発電所などは、第1種・第2種電気主任技術者が保安を行うと定められています。しかし、近年の再エネ発電設備の増加スピードが続けば、第2種電気主任技術者の新規就労者数を上回り、保安人材が不足すると懸念されています。
現在認められている電気主任技術者の「統括制度」とは、「統括電気主任技術者」と呼ばれる資格者が最大6ヶ所までの再エネ発電所を監督できる制度です。17万ボルト未満の太陽光・風力・水力発電所を保安でき、発電所の規模に応じて、第1種・第2種・第3種電気技術者が 「統括電気主任技術者」 になることができます。2013年の「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」の一部改正によって可能になりました。
ただし、この統括制度においても2時間以内に発電所に駆けつける「2時間ルール」を守らなくてはいけません。ところが、再エネ発電設備は、拠点となる事業所から離れた山間部などに設置されることがあり、2時間以内に到着することが難しいケースも考えられます。
脱炭素化社会に向けて再エネ発電設備の拡大が求められる今、電気保安の人材や体制が整わないために再生可能エネルギーの導入ができないという状況は避けなければなりません。特別高圧の発電所の保安ができる第2種電気主任技術者の人材確保は、喫緊の課題であるといえます。
「統括制度」見直しで第3種技術者の派遣を可能に
そこで今回、経産省が打ち出したのは、第2種電気主任技術者の資格をもつ統括電気主任技術者がスマート保安技術で指揮を行い、第3種電気主任技術者を発電所に2時間以内に派遣する案です。現状の制度とは、実際に発電所に駆けつける技術者に求められる資格が異なります。なお、スマート保安とは、最新のデジタル機器やテクノロジーを取り入れ、電気保安を効率化することを指します。
経産省が示したイメージは下図の通りです。
これによって、統括電気主任技術者の指示のもとであれば、第3種電気主任技術者も特別高圧発電所を保安できるようになると考えられます。条件付きですが、特別高圧の発電所を保安できる人材が第3種にまで拡大され、保安人材の確保につながるとされています。
もちろん、この実現にあたっては統括電気主任技術者がしっかりと指揮・監督できるようなスマート保安の環境整備が必要です。(参考『電気保安の課題解決へ期待集まる「スマート保安」』)
人材不足の抜本的な対策も望まれる
今回の案は保安人材の不足への対策案ですが、電気主任技術者の有資格者を増やす根本的な対策にはなっていません。大切なポイントは、有資格者そのものを増やすことと、資格をもつ人が電気主任技術者の仕事をしたくなるような施策を打つことではないでしょうか。
本ブログでは、これからも電気保安の制度やシステムについての重要なトピックスについてご紹介していきたいと思います。ご不明な点やご意見がありましたら、どうぞお気軽にお問合せください!
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